架空の家族 嘘ばっかりでごめんねと いまさら小さくこぼすけど もうどうしようもないから、好きなだけ泣きなよ。 どんなに透明になっても いまだにちゃんとある身体を たくさん抱きしめては 怯えるばかり ずっと… 赤くて長い帰り道に影だけすーっと深くなる 僕たちはいつまで「しあわせ」に殺される? 優しい灯りの灯る家に架空の家族が待っている 疲れた僕を暖炉の部屋で迎えてくれる 優しい父母と妹役が腐った夕餉を待っている 鉛のとろけたスープの前で 笑わなきゃねぇ、僕は... その夜 こころが小さくうめいては 潰れて散った音も全て 笑い声にまみれて 伝わることはないよ 期限の切れた晩御飯を階下でずーっと呼んでいる 四角い部屋でまた「やさしさ」に殺される いとしい祖母役がしおれた目で 僕のことじっと見ているから ぐぷり、とただれたスープを匙ですくって飲んでいく ねえ昼だって鈍い色で食卓を覆ってしまったのは しあわせに似せただけの いびつなまがいものなんだよ さあ!灯りの灯る家に架空の家族が待っている 温度があるのにひどく寒い住居でずっと待っている もう終わり そんな言葉も意味ないくらいに終わったあと それでも、ひきつってても、嘘でも 笑わなきゃねぇ、僕は... 架空の家族が待っている!