夢堕ち    その廃墟には、凶悪な魔人が住んでいた。近隣の城からは幾多の猛者が派兵されたものの、討伐の知らせが届くことはなく、日に日に廃墟の周辺から邪気が漏れ出てくる始末であった。 「ああ、つまんねえなあ」  魔人はそう言うと、足下に転がっていた屈強な男を一人、片手で悠々と掴み上げた。魔人を討伐に来た者の一人であったが、その格好は一般の兵士や傭兵ではなく、山賊等のならず者である事が分かる。それだけ、人材が足りていないのだ。禿頭に無精髭のその中年は、リーデッドと仲間から呼ばれていた。愛用の手斧は折られ、手足の骨にひびが入り、衣服もぼろぼろである。血と汗で固まった彼の強い髪の毛を魔人は鼻を鳴らして嗅ぐ。勿論、匂いを嗅いでいるのだが、それよりもっと深い能力を使って魔人はリーデッドの隠された力を探っていた。 「くっ……殺せよ」 「つれないこと言うなよ、おっさん」  固太りした腹や胸をまさぐりながら、魔人はリーデッドの肉体に印を密かに付けていく。邪悪な術に蝕まれた中年の身体は、熱に火照り、呼吸が乱れていく。 「はぁ、はぁ、はぁっ……!」 「お前は邪悪な心を持っているな。俺には分かる。きっと良い淫獣に生まれかわるぞ」 「や、やめろぉ!俺は、俺は、魔物になんかなりたくねぇっ!んぎぃっ!!」  焼けるように心臓が痛み、今までの過去の行いの分だけリーデッドを苦しめる。強盗や傷害、或いはレイプといった過去のあらゆる悪行が、魔人の手によってリーデッドを転生させる贄となっていた。魔人の記した呪文が、リーデッドの全身を包み込む。その魔法は魔人のお気に入りの一つだった。 「あ、があっ!!」  ごきごきっ、と嫌な音がして、リーデッドの骨格が変わる。人としての面影残したまま、自らの行為に相応しいケダモノへと姿を転じていく。痛みに喘いでいた顔も、いつしか堕ちていく快楽に染まり始めていた。茶褐色の肌に、真っ黒な剛毛、いや、獣毛が生え揃っていく。鞭の様な尾が生え、足は蹄になってしまっていた。禿頭からは雄々しい角が二本突き出し、野蛮で粗野な顔つきは更に邪悪に歪んでいた。 「ンモオオオオオオウウッ!」  雄叫びを上げた淫獣にリーデッドの人格は無く、ミノタウロスとして新たな生を受けた魔獣がそこには居た。魔人は満足そうに笑いながら、金色の鼻輪をリーデッドに付ける。彼は嬉しそうにそれを受け入れ、半人半獣となったその身を恭しく魔人の前で折り曲げた。頭を魔人のつま先にぴったりとくっつけ、自らが身も心も忠誠を誓っていることを示す。恍惚とした表情を浮かべながら、リーデッドは長くざらざらした舌で魔人の足を隅々まで丁寧に舐めた。びりびりに破け、辛うじて残ったボロ布を淫獣は煩わしいと言わんばかりに引きちぎると、毛むくじゃらの巨躯と雄々しくそびえ立った肉棒が露わになった。だらしなく鈴口から溢れ出る先走りが、リーデッドのはしたない性質を連想させる。 「このダンク様の下僕に相応しい、淫らなケダモノに生まれ変わったものだな」 「ンモゥッ!」 素直に返事をするリーデッドを魔人ーーダンクという名の、元は人間だった男が撫でる。彼もまた、肉体と心を魔族に転じられた者の一人だった。今や魔王バベルの軍門に下り、その力はとても人間の対抗しうるものではない。格闘家として鍛え上げられた逞しい肉体には呪印が全身に刻み込まれ、褐色の肌には淫らな毛が所々生い茂っている。童顔な元の顔つきに不釣り合いな顎髭や胸毛、濃くなった体毛は彼の性欲の強さを言外に物語っており、清廉で修行に集中していた筈の彼の変貌ぶりを感じさせた。また、バベルに直接魔力を注ぎ込まれた事から、ダンクは最早人間ではなく魔人として転生させられており、両足には膝先までの長さの真っ黒なブーツかソックスかわからないものが、両手は真っ黒なナックルが直接肉体と融合しており、鋭い鉤爪が生えている。長い尾と額から伸びる二本の角、尖った犬歯が典型的な悪魔の特徴を表していた。 彼、ダンクに与えられた使命。それは人間を魔の眷属へと転生させていく事であるーー丁度、彼自身がそうされた様に。リーデッドの様な、最初から心に邪悪な素養を持っている者程、魔に馴染みやすかった。すぐに身を転じて、淫獣と化してしまう。実際、廃墟に住む魔物の大半は彼の様な荒くれ者の成れの果てであった。 リーデッドは期待を寄せて、ダンクに向けてケツの穴を広げていた。淫獣に身を堕とした者は、何の恥じらいもなく自らの性欲を満たそうと常に画策している。それは、魔人になったダンクもそう変わらなかったが、彼らよりは多少マシであると思っている。前戯もなく、ダンクは臨戦態勢になった凶悪なイチモツをリーデッドにぶち込んだ。痛みに鋭い悲鳴をあげるが、ダンクはそんな事お構いなしにがしがしと腰を振り続ける。悪魔とミノタウロスの性交。地面に倒れ伏す兵士達は、その退廃的な行為に顔をしかめていた。 「ブモッ?!ブモオオウウウッ!!」 「おら、孕んじまうくらいたっぷり種付けしてやるよ!!」 二匹は全身の筋肉を痙攣させる様にして、同時に射精した。ダンクは天を仰ぎ、快感に目尻を下げ、だらしなく舌を垂らしている。一方、リーデッドは初めてのメスとしてのセックスに圧倒され、白目を剥いて口角に泡が溜まっていた。すっかり拡張されたアナルからは、ダンクのものである黒い邪悪な精液がごぽごぽと漏れ出し、自らの先の尖ったチンポからも同じものが大量に噴き出している。魔人が支えるのを止めると、リーデッドはその大柄な肉体を床に伏し、気絶してしまった。 「一丁上がりっと」 ギンギンに隆起したままのチンポを見せびらかすように歩き、また一人、倒れていた男を持ち上げる。男は小さく悲鳴をあげて、肩を戦慄かせた。 「次はお前だ」 「あ、ああ、いやだ、いやだああああああ!!」 みしっ、という嫌な音が廃墟に響く。男達がみな淫獣に変わるのに、そう時間はかからなかった。   ダンクが一通りその日の仕事を終えると、そのまま地下のある一室へと向かった。そこだけは廃墟といえども頑丈な造りになっており、鍵や拘束具が置いてあった事から牢として使われていた事が容易に推測できる。 そこには一人の男が居た。両手両足を鎖で拘束され、大の字に壁に貼り付けられている。ダンクを見ると敵意を剥き出しに睨みつけた。 「仲間はどうした!」 「みな淫獣になったが?」 そっけなくそう返すダンクに、男は歯ぎしりをする。よく見ればまだ若い。が、鎧や持ち物から見て、男が本当に国の騎士団に所属しているであろう事が分かった。ダンクは直感からこの男が今日、侵攻してきた部隊の中で唯一の実力者だと見抜いたのだ。 「アーマーナイト、か」 重騎士とも呼ばれる装備を見て、ダンクは男のディテールを埋めていく。立派な体格に、長槍と厚手の鎧。金色の短髪。髭は丁寧に剃ってあったが、一日とう時間でぽつぽつとまばらに生え始めている。装備のレリーフと身のこなし。そして年齢。 (中堅、といったところか) そう結論づけ、そこから相手の戦力を逆算していく。ダンクは特に感慨もなく、勝ち戦である事を確信した。 「名前は?」 「悪魔に名乗る名前など無い!」 強気で返す男は、鎖を思い切り揺らした。勿論、ただの鎖ではなく魔力が施してあるので、鎖が外れる事はない。だが、正規の騎士となると魔物に転生させる事はなかなか困難である事も確かだった。彼らは魔や邪に魅入られないよう清く正しい生き方を奨励している節がある。この堅物もそうだろうとダンクは思っていた。「めんどくさいから一旦置いといた」。それがこの部屋を使った理由である。 「少し遊びをしようか」 ダンクが声を掛けると、鎖が外れ男の体が自由になった。男は訝しんでダンクを見た。 「仲間が来るんだろう?それまで俺と遊ばないか」 「何を……」 「お前が俺に勝ったら、お前は逃げ出す事が出来る。俺が勝ったら、お前は俺の言うことを何でも一つ聞く。どうだ?俺はお前を殺したりはしない。なんてったってお前には立派な淫獣になってもらわないと困るのでな。だが、俺の能力ではお前をいきなり淫獣に変える事も出来ない」 「何故だ?」 「準備が必要なんだ。幾つかの手順を踏めば、お前が自分から魔物になりたいと言ってくるようになる」 「馬鹿馬鹿しい!!」 「俺が勝ったら一つずつその手順を踏んで、お前を淫獣に変えていく。お前が勝ったら、すぐその場で逃げ出して良い。俺は後を追わないし、魔物にも襲わせない」 プライドを値踏みされているのが分かるからか、男は複雑な表情をしていた。暫くした後、長槍を手に取り機敏に構えを取る。 「そうこなくっちゃな!」 ダンクは素早く飛びかかり、戦いが始まった。 ダンクの言葉は半分は本当で、半分は嘘だった。 男をすぐに淫獣にする事は出来たが、それは質の悪いものーー例えば、リーデッドの様なーーであり、優れた肉体と健全な精神を有した男ならば、より強力で優れた魔族に転生させる事が出来ると踏んだからだ。そうして、それにはやはり幾つかの手順が必要で、それに従わせるにはこうした本人の承諾がなければ成し得ない。 男の槍は早く、そして力強かった。ダンクが予想していたよりもずっと彼は強く、驚きを隠せない。だが。 男は胴を強かに蹴られ、体勢をほんの一瞬崩した。それを見逃さなかったダンクが、もう一度蹴りを入れる。鎧を通してなお、痛みが伝わるその重たい攻撃は、ダンクの人間時の修行の賜物であった。崩れ落ちる男の長槍を奪い、ダンクが勝利を収めた。 玉の汗を浮かべ、肩で息をする男に向かい、ダンクはこう言う。 「お前の名は何だ?」 部屋の空気が変わり、これが「契約」の一種である事が男にも分かった。嘘を吐いたり、約束を違えたりするのは禁じられている。そういう呪いがかけられているので、男は意図せず口から自らの本名が出てしまう。 「……ヴァンゴ」 男は悔しげに顔を歪め、地面を拳で殴りつけた。悪魔に名前を知られるという事、それがどんなに致命的な事か彼は知っていたのだ。 間髪入れずに行われた戦いでは、名前を知られた動揺が大きかったのか、またしてもあっさりとダンクがヴァンゴを組み伏した。ヴァンゴの焦燥が手に取るように分かり、魔人は自らが圧倒的有利に立ったのを感じた。 ダンクが次に命じたのは、その厚い鎧を脱ぐ事であった。 青いカラーリングのその鎧は丈夫で、魔を退ける呪いもかかっている。それを魔人はきちんと見抜いていたのだ。ヴァンゴという名のアーマーナイトは、そのアイデンティティとも言うべき鎧を失い、がっちりと鍛え上げられた肉体をインナースーツに浮かび上がらせて、悄然と佇むばかりだった。高貴な騎士から、ただの筋肉質な男へ。ヴァンゴは確実に身を堕としつつある。 「ヴァンゴ、もうお前は俺に勝てねえよ」 肩で息をしながら、それでも長槍を構えるヴァンゴに、魔人はそう告げた。鎧の加護もなく、意地だけで敵と対峙している彼に勝ち目はない。それでも彼は槍を振るった。渾身の一撃はダンクの脇腹に当たるが、踏み込みが足りずに凡庸な攻撃に終わる。ダンクのカウンターが、守るものの無くなったヴァンゴの鳩尾を強かに突いた。 「か……はっ……」 目を大きく見開き、男はそのまま地面に倒れ伏した。死力を尽くしたヴァンゴの巨躯を、ダンクは軽々と持ち上げ、汗だくのうなじに長い舌を這わせる。インナースーツが覆う広い背中からは、湯気が上がっていた。 「バカだな。でも一回は一回だぞ」 ヴァンゴの両手両足に鎖をはめ直すと、ダンクは厳かに気を練り始める。魔人として与えられた魔力。それを駆使する事で人を魔の道に引きずり込む事が出来るのだ。 「魔神バベル様の名において、淫呪よ、騎士ヴァンゴの身に刻まれたまえ!」 紫色の曲線が、幾何学的にヴァンゴの手足の先から体全体に向けて伸びていく。インナースーツから素肌にかけて連続するそれは、ダンクの身に刻まれた紋様と酷似していた。気絶していた筈のヴァンゴは、無意識の中で抵抗をしているのか、苦しげな表情で悶えている。 「う、ぐわあああ?!」 全身を淫呪が覆った瞬間、ヴァンゴは天を仰いで叫び声をあげた。下半身に密着するスパッツをヴァンゴ自身が押し上げている。ダンクは喜びを隠しきれず、思わずそれに触った。びくん、と敏感に震えるヴァンゴのイチモツは、まだまだ初心であるに違いなかった。 「さあ、ヴァンゴ。お前は何分で淫乱に生まれ変わるかな?それとも、淫呪を打ち破るか?」 ダンクは耳元で囁き、再び階上へ向かい、新たな敵を迎え撃つ準備を始めた。    ※   ヴァンゴが見ていたもの、それは悪夢に他ならなかった。 全身を駆けめぐる衝動。それが生まれてから両手で数える程しかした事のない自慰の時の感覚を数百倍にしたようなものである事。あたり一面は闇で、両手両足は鎖に繋がれていた。鎧どころかインナースーツも無く、彼は全裸でそこに立たされている。紫色の淫呪が、自身の肉体を拘束している事に気が付くと、そこに熱い鉄の棒を押し当てられたように欲情が沸き上がってくる。赤黒いチンポは反り返って臍に先端がくっついていた。 (頭が、おかしくなりそうだ……) 熱でぼうっとする思考を取りまとめようとするが、砂が手からこぼれ落ちていくように捗らない。ケツの穴が、何かを求めるかのようにひくひくと疼く。神経はそちらに集中していた。 (何だ、これは?どうすれば……?) その不快感を解消する手だてを考えるが、回らない頭では一向に思いつかない。その時、ヴァンゴの眼前の闇に一筋の光が射し、おなじように鎖に繋がれ淫呪を全身に刻み込まれた男が浮かび上がった。坊主頭に鍛え上げられた肉体。見慣れた筈の敵、ダンクだった。 (何故ダンクが!?) 何故気付かなかったのか、と思うほど近くに二人はいたが、ダンクからヴァンゴは見えない様だった。ダンクは荒々しく呼吸をし、同じように淫欲に抗っている事が見て取れる。そして、ヴァンゴはダンクがまだ人間の姿をしている事に気が付いた。肌は黄色で、角も牙も尾もなく、素肌もつるりとしており、何より面相が好青年である。しかし、額には珠の汗を浮かべ、苦しげに呻いていた。 「もう、我慢できねえっ!!」 唐突にそう言うと、ダンクはがに股になり、地面に向けて尻を広げる様にして腰を深く落とした。固いと思っていた足下の床がぞわりと波打ち、するすると真っ黒な触手が何本も飛び出してくる。その内の一本が、目ざとくダンクのアナルにするりと入り込み、深々と彼を貫いた。 「んあああああっ!!たっまんねぇ!!」 好青年の顔は崩れ、涎を垂らしながら顔をだらしなく弛緩させるダンク。びんびんに勃起したチンポからは先走りがだくだくと溢れ、それが如何に気持ちよいのかを如実に伝えている。眼前で繰り広げられる痴態に、ヴァンゴは息を飲んだ。 「あぁっあっあっあっ!すげっ!すげええっ!!」 快楽に屈したダンクは腰を振り、欲情を貪っていた。その姿にも、ヴァンゴの性欲は止まらずに反応している。彼の足も、知らず知らずに少しずつ開かれていく。 (少しだけなら……) 性欲から解放されたい一心で、ヴァンゴはダンクと同じように股を開いた。腰を落とし、恥ずかしさを忍んで目を瞑る。毛の生い茂った肛門に何かが触れるのを感じ、身を固くする。ぬるりと粘液に包まれた、生温かいものモノが体内に侵入してくるのが分かった。 「ん、ぬおおおおおおおっ!!」 思わず声をあげ、その未知の快感にヴァンゴは圧倒された。ケツの疼きは消え、代わりに気持ちよさが全身を駆け巡っていた。前立腺を刺激する枝と、腸壁を突き解す枝が、絶妙にヴァンゴを責め立てる。ダンクの見よう見まねで腰を動かすと快感は数倍に膨れ上がった。 「う、はああああっ!!うおああああああああ!!」 (駄目だ、もう何も考えられねえ!!) ダンクと瓜二つの、だらしない顔を晒してヴァンゴはケツを触手に掘られていた。淫呪の輝きが増し、ヴァンゴを更に戻れない領域へと連れて行く。眼前でダンクが美味しそうに奇形の触手を頬張るのを見て、ヴァンゴもそれに習い口を開けて待つ。先端が男根の形をした触手が、粘液を滴らせながら滑らかにヴァンゴの咥内へと入り込む。塩辛い味にヒドく噎せたが、すぐにその味にも慣れた。手足の鎖もいつの間にか触手に転じており、全身を触手に絡め取られ、そして、認めたくない事であったが犯されているのであった。身体は既に、喜びに打ち震えている。どろりと苦い流動体が口と腸に流れ込む。それが自らを変える決定打である事が、薄ぼんやりとヴァンゴ自身にも分かっていた。しかし、目の前のダンクの痴態を見ると、それも最早どうでもよくなっていく。幸福そのもので、嬌声をあげる以外の人語を忘れてしまったかの様な彼を見ると、自分の末路が分かるのであった。そう流されてしまった方が楽なのだ、と。その内にダンクの肉体に変化が生じていく。逞しい筋肉を覆うように生い茂っていく剛毛、そして淫呪は色を変え、褐色になった肌に黒々とタトゥーの様に刻まれていく。とろんとした目尻を下げ、歪んだ口元から長い舌が飛び出る。見慣れた魔人としての姿へとなっていく様子を見て、ヴァンゴはようやく生々しい危機感を抱く事が出来た。しかし時は既に遅く、全身の力は抜け、ただなされるがままに触手から魔を注がれる一方だった。 (魔物になっちまう、俺も魔物に、魔物、魔物、んあっ!) 「ん、はあぁっ!」 口から触手が外れると共に、ヴァンゴの肉体の変化も始まった。それはダンクを追随するかの様に進み、元来色白だった皮膚が褐色へと変わっていく。淫呪は紫から黒へ変わり、皮膚に直接彫り込まれていく。 「が、ああああぁぁあぁああ?!」 恐怖と痛みで叫ぶ事しか出来なかった。人相も少しずつ変わり、黒目は小さくなり三白眼気味の凶悪さが際立つ表情になった。下半身を中心に真っ黒の剛が生い茂る。しかし、苦しみの表情は少しずつ快楽に染まっていき、先端が尖りずる剥けとなったチンポを両手で掴むと、ヴァンゴは躊躇いながらもそれを扱き始めた。その間も肉体の変化は続き、アーマーナイトとして長年鍛えられた巨躯はさらにパンプアップされていく。腹と同じ厚みで膨らんだ胸板。それを覆う今までは無かった筈の黒い剛毛。それを彩る淫呪。下半身は最早獣のそれの様に体毛が密集して生え、褐色の地肌を見る事は叶わない。その合間から突きだした、乳児の腕程もある巨大な男根。 「あはぁぁ……チンポ、チンポ気持ちいいぜぇ!」 精悍で生真面目だった頃のヴァンゴはそこに居らず、スケベ顔でにやつきながら自慰に耽る、頭から角を生やした魔物が一体居るだけだった。正面に立つダンクが歓声をあげ、ヴァンゴの全身に黒い邪悪な精液をぶっかけた。その匂い。味。全てが魔物の望んだものであった。 「うおおおおおおおお!!さいっこおだああああああ!!」 人外のイチモツから精液が噴出する。その色は勿論、黒。魔へと転落した者の証であった。    ※   「う、うおああああああああああ!!イグッ!イグウウウッ!!」 インナースーツの中に大量に精を吐き出し、ヴァンゴの悪夢は一応の終わりを迎えた。手も触れずに果て、ぐちょぐちょに汚れた衣服からは異臭が漂う。人間としての尊厳は踏みにじられ、ヴァンゴの精神力も尽き果てようとしていた。 「随分時間が掛かったな」 「うっ…………」 ヴァンゴが目を開くと、そこには魔人の姿があった。自らの身体を確認すると、淫呪が皮膚に刻まれている以外には特に変化が無い。鎖を外され、ようやく自分が今、どのような状況にあるのかを思い出していく。股の不快感に顔をしかめながらも、何度も自らの匂いを確認してしまう。 「あれから3日も立った。お前の精神力はなかなかだな……だが」 ダンクの言葉も上の空で、ヴァンゴは自分のインナースーツや肉体を確認している。黒のインナースーツは汗が塩となって浮かび、着続けた事から鼻を背けたくなる様な酷い異臭がしていた。股間は先程「夢精」したばかりの精液にまみれ、まだ股間は萎える事がない。それにも注意を払えず、ヴァンゴはただ疼く肉体を持て余していた。 「俺に、何を、したん、だ?」 「それはお前自身が一番良く知ってるんじゃないのか?」 ダンクが鋭い爪をインナースーツに引っかけると、抵抗もなくあっさりとそれは裂けていく。むっと蒸れた男の汗の香が匂い立ち、ザーメンで薄汚れたヴァンゴの生まれたままの肉体が露わになる。がっちりとした肉体の隅々にまで、黒々と淫呪が刻まれている。 「お前が射精をした事で、この淫呪は永続的にお前を縛り付ける」 「う……あぁ……」 じわじわと全身に疼きが広がっていく。自分の肉体に、その匂いに、その味に欲情しているのが分かる。しかしそれだけではまだ足りなかった。自分が魔に堕ちた瞬間。あの快感と力がヴァンゴを支配していた。 「このままじゃ、おかしくなる……てめえの匂いじゃ、全然足りねえんだ!チンポも、ケツも……!」 無意識に手が自らの胸や尻に伸びていた。そうせずには居られない程の強い性欲。しかし、それを自らの手で満たす事は出来ない。チンポを直接擦ったとしても、射精に至らないだろう予想が彼にはあった。その程度の刺激や快楽では到底満足出来ない。一度、魔に身を浸したあの瞬間が忘れられない。縋るような目で彼は魔人を見ていた。 「どうすればいいか、わかるな?」 半笑いで尋ねる魔人に、ヴァンゴは堕落した笑みを浮かべて頷いた。逞しい肉体を折り曲げ、立て膝をつく。頭を垂れ、自分の体臭に欲情しながらアーマーナイトは人の道を外れた。 「俺を、魔族にして下さい……ダンク様」   二人の男が鎖に繋がれ、その儀式を見ていた。アーマーナイトとして団から信頼を置かれていた仲間が変わり果てていくその様子を。本人からすればそれはただの夢の再現でしか無かったが、抵抗もなくあっさりと魔に屈していく様子は奇妙なものだった。ダンクが深く突く度に、ヴァンゴは感じ、脳天まで突き抜ける快感に酔いしれた。魔を取り入れる毎に、ヴァンゴは夢で見た「理想」の自分へと近付いていく。再び精を吐き出した時、その色は黒く変わっていた。 「どうだ、ヴァンゴ。お前の新しい姿は?」 夢と寸分違わぬ姿となった魔物に、ダンクは声を掛けた。違うところはただ二つ、それが現実である事と自らが望んだという事だった。艶めかしい褐色に魔人と瓜二つの入れ墨の如き淫呪。顎を覆う髭には先程まで舐めていたダンクの肉棒から滴った精液がこびりついている。尖った牙の合間からはいやらしい喘ぎ声が断続的に漏れていた。男達が絶望したのは、何よりもその顔つきである。記憶の中では険しく気高かったヴァンゴ、それは今や魔人に肉体を貪られ、歪んだ笑みを浮かべていた。白痴の様なその弛緩した顔に、また黒い精液が浴びせられる。それを味わい、身に取り込む事でまたヴァンゴは魔族としての力を強めていく。下半身は獣の四肢の様に変化し、真っ黒な獣毛の中から赤黒い円錐状の突起が天空を突いている。先端から黒い潮を噴き上げ、感極まった声を魔物はあげた。人目をはばかる事を忘れたヴァンゴは、鎖に繋がれた仲間を認めてもその性交に従事する事を止めない。 「ん、あひっ、さいこおっ!さいこおですっ!!」 ヴァンゴがようやくコミュニケーションとしての言葉を発する。人語を解し、発話の出来る魔物は少ない。それだけ高位の魔族としてヴァンゴが完成しつつある事が分かった。ダンクは自らの働きぶりに満足を覚える。あの二人はどのような魔族に生まれ変わるだろうか。一瞥をそちらに向けると、二人は恐怖とその光景のおぞましさに震えていた。どちらもヴァンゴに負けず劣らずよく鍛え上げられた騎士だろう。しかし、手間は「これ」よりもずっと省ける。ダンクは抱えていたヴァンゴをゆっくりと手放した。ヴァンゴは物足りなさそうな表情をしたが、十全な量の魔力、そして精液は注がれている。すくっと両足で立った姿はどこから見ても魔物、いや、ダンクと同じ魔人として分類される姿となっていた。下半身がヒトでなく、獣である事がヴァンゴのオリジナリティのある魔力の発現だった様だ。アーマーナイトとして鍛え、育てあげられた恵まれた体躯を支えるのに相応しい。思い出した様に、尻から鞭のような尾が生える。粘液に包まれたそれが、ヴァンゴの魔族としての転生が完了した事を示していた。逞しい胸に手を当て、再びヴァンゴはダンクの足下にひざまずく。 「ありがとうございます、ダンク様。我が命はあなたの為に」 騎士として礼節を重んじるヴァンゴの性向が、魔族としての新しい習慣と溶け合っている様子が分かった。見上げる魔物の表情は、心酔と敬愛、そして崇拝が混じり合っている。ダンクはこの愛しい魔物を長く身近に置こうと決めた。顔を近付けて、長い舌を絡め合うと、ヴァンゴはそれだけで果ててしまい、足下に多量の精液を流していた。恍惚として魔人のキスを受け入れるヴァンゴは、喜びで全身を震わせる。 「あの二人の名は何だ、ヴァンゴ?」 「年若い方がザンサ、年長の方がシガルトと申します」 二人の表情がさっと曇るのを、魔人は見逃さなかった。騎士団の仲間がくれば、名前をわざわざ聞き出す手間も省ける。ダンクはヴァンゴの汗ばんだ裸体をいやらしく撫でた。 「良い子だ、ヴァンゴ」 「勿体ないお言葉です、ダンク様」 言葉とは裏腹に、ヴァンゴはダンクに褒められた事でまた興奮を覚えていた。緩んだ頬がそれを言外に伝えている。 「では俺がシガルト、お前がザンサに魔を注ぐ事にしよう。出来るな?」 「はっ!」 急にきりりと表情を引き締めると、騎士として生きていた頃の面影が重なる。魔物として生まれ変わった仲間が、その仲間が敵わなかった相手が近付いてくるのを、二人の騎士は恐怖に焦がれながら見守っていた。