寄生生物『パレス』弐の章   「がっ………ハァァァッ!!」 獣じみた声を出し、男は全身を魚の様に痙攣させた。目の焦点は合わず、俺を力強く睨んでいた数分前とはまるで別人である。口はだらしなく開き、脂ぎった肌に粘液がこびりついている。全身の力が抜け、男は膝から地面に崩れ落ちた。 「あ……ふぅ………ひぁぁっ!!」 半ば気を失った状態で、異質な物と融合していく。俺と同じ属性の『パレス』へと男は進化するのだ。日々の訓練で締まった男の腹部は、俺が産み落とした卵核でぽっこりと膨らみ、水色の制服を窮屈に押し上げている。 「し………もだ……なんっ…で……」 男は俺にいつも丁寧な指導をしてくれる先輩の白バイ隊員だった。そう記憶している。角刈りで濃い顔立ちの、男らしい野郎だ。激を飛ばされたり、怒鳴られたり、褒められたり、そういう記憶もある。しかし、今の俺にはあまり関係の無い話だ。 「うぐぅぅッ?!うおあああ!!」 厳つい顔が苦痛に歪む。制服の股間には既に何度か果てた証の染みがあり、ロッカールームにはイカ臭い匂いが充満していた。俺は男を見下ろし、正義の象徴である彼が淫欲に身を投じるその一瞬を待ち望んだ。 「あっ?!ああああッ?!う、生まれちまうっ!!俺ん中でガキ生まれちまぅぅっ!!」 ビクンっ!!と制服を持ち上げていたテントの頂点から緑色の粘液が噴き上がった。腹の膨らみはゆっくりと消え、代わりに男は『パレス』としての肉体の完成を迎えた。汗は男を発情させるフェロモンとなり、舌からは卵核を生成して体内に送り込める構造となる。 「はぁぁぁぁ!!!」 カッと目を見開き、男は聖職である警察官から眷属へと身を堕とした。精悍だった顔付きは男好きのする何処かイヤらしい雰囲気を漂わせ、頑強な肉体は浅黒く脂が載っている。頬を流れる汗は粘性を帯び、ローションの様な光沢感があった。 「なん……ら、これぇ……すげーきもひいぃ……」 長く伸びた舌をだらしなく垂らし、『パレス』の器として完成した男は最早記憶のものと変わり果てている。 「先輩も『ライダー』の一員ですよ。ほら」 俺が白バイ隊員に支給される制服との同化を促すと、グローブやブーツが神経接続されていく。 「がひっ!」 水色の制服とも男は接続を果たし、巨根がズボンを簡単に裂いてブルンと飛び出した。緑色の糸を引き、粘液にまみれたそれは人外に堕ちた男の本当の姿である。 「バイク……俺のぉっ…バイク…早く同化してぇっ!仲間!仲間殖やしまっすぅッ!」 脳にまで『パレス』が到達し、男は俺達の存在意義を理解し、叩き込まれた。俺は男が愛しくなり、長く伸びた舌を絡ませ、丁寧に頭を撫でた。短髪に滲んだ汗はぐっちょりと糸を引き、俺も男も全身ローション塗れに近い。 「良い子です」 男は俺の外殻(つまり白バイ)から飛び出たチンポを舐め、ゆっくりとくわえた。男の制服は既にアンダーとして同化を終え、バイクによる外殻の形成を待ち望むばかりだ。俺は男の名前を思い出す。 「ん……宍戸先輩、さすがっす…!!」 「霜田のチンポうめぇっ!うめぇよぉっ!!これが『パレス』様の味、俺達のくっせぇ種子の味かああっ!!」 俺のイチモツが爆ぜ、緑色の種子が宍戸先輩の顔面にぶっかかった。指ですくい取り、先輩は美味しそうに口にそれを含む。俺は何だか嬉しくなった。 「な、何やってんスか……霜田、お前そのカッコ…」 振り向くとまた体格の良い、若い男が立っていた。確か俺と同期の男だったが思い出せない。スキャンすると寄生適合者である事は一目瞭然だった。 コイツは柔道だっけ?それともレスリング?ああでもどうでも良い……早くコイツにも仲間になってもらわないと…『ライダー』族の繁栄の為に。 密閉された室内には、俺と宍戸先輩の醸し出した汗、ひいては発情物質が充満している。男は二の句が継げずにそのまま立ちすくんでいた。ズボンにはくっきり見事な肉棒が無意識に浮かび上がっている。俺は意識して男に向かって発情物質を飛ばした。 「う……あ、な、何だ……」 顔を火照らせた男に向かって、俺は歩き出した。 同じ車種で同化すると、外殻の形状は変わらないらしい。俺と同じ姿になった二人が車庫から出て来る。初めての同化に興奮し、惚けた顔をしていた。コンクリートの床には種子が何度もぶち撒けられ、快楽の強さを物語っている。数時間前は只の人間だった筈の二人は、今や怪物として完成型になっていた。俺達を支配するのは、繁殖と繁栄の概念だけである。それが本能的な快楽に直結されているのだ。俺は肉体の隅々にまで行き渡り、俺の神経系を乗っ取った『パレス』に感謝すらしている。 「あ……はぁぁぁ!!いいっ!いいぜぇっ!!」 繁殖の御褒美に俺の肉体には『パレス』から直々に快楽が与えられる。仲間を殖やすのに成功すると今までのセックスや同化が霞むくらい気持ち良い刺激を戴ける。全身の細胞がドラッグ漬けになったみたいな感じだ。 「さいっこぉぉだぁぁああッ!!」 ガクガクと足腰を震わせながら、手も使わずに果てた。これが病みつきになる。一度繁殖に成功したら直ぐに次を探してしまう中毒性。真緑の種子が放物線を描いて何度も何度も繰り返し放出された。   ※   黒光りするアンダーギアを捲り、俺は匡樹の逞しい肉体に吸い付いた。 「おっ、親父っ!!」 すっかり声変わりし、カラダも出来上がった息子は完璧な男、いや、雄だった。どうしてこんな事に早く気づかなかったのか俺でも不思議に思うくらいだ。 突起した乳首を摘み、ローションの様に汗をユニフォームに染み込ませていく。泥だらけのアンダーストッキングが抵抗する様に俺の足を何度も擦った。 「うめぇ……匡樹の球児汁最高だぁ」 「っ!……ぁぁぁっ…………」 まだオンナも知らない肉体を貪られ快感に堕ちていく。その様子が手に取る様に分かった。密着した腹に、萎れていたチンポがむくむくと硬さを増していくのを感じる。 「そろそろ本気でお前を支配してやる!!」 指先を『パレス』の端末となる触手へ変形させると、匡樹は素っ頓狂な声を上げて手足を激しく動かした。勿論、そんな事で俺はビクともしない。触手をゆっくりと彼の耳の中に入れ、脳へと伸ばしていく。 「あぎぃぃぁあぁあああっ?!」 匡樹は泡を吹き、白眼を剥いて射精した。脳から直接与えられる快楽に、それを書き換えられる喜びに段々と表情が緩んでいく。狂った様に身悶えしながら、彼は空撃ちになるまで精を吐いた。匡樹の肉体的な土壌が整った事を確認し、俺の『パレス』に改造された長い舌を彼の口内から食道にまで挿入していく。窒息しない様に少しだけ隙間を空ける様意識しながら、舌先を少しずつ緩めていく。筒状になった其処からは、ピンポン玉大の卵殻がぼとぼとっ、と産み落とされた。胎内に着床する度に匡樹は身悶えし、腹筋をうぞうぞと蠢かせる。自分の若き日を思い出させる、少し面皰が多すぎるその顔に俺は優しく触手を擦り付けた。脳姦の苦しみから逃れた彼は、虚ろな眼差しを実の父親である俺に向けている。 「あはぁ……親父のガキ、こんなにっ、た、たくさん孕んじまった……」 綺麗な腹筋を醜く膨らませる卵殻を、匡樹は愛おしげに撫で回した。『パレス』が俺に教えてくれた、人間の最も複雑な機構である脳を弄れば、難なく対象を繁殖の苗床にする事が出来るという事を。「神谷」「霜田」そして俺、「宍戸」を陥落させた手順とその内部からの研究で『パレス』が知り得た情報だった。今や匡樹は、『パレス』に肉体を支配される事を待ち望んでさえいるのだった。小汚いストッキングを履いた足を抱え、毛だらけのケツをこちらに向けていた。俺は望み通りに真緑の種子が絡まった竿を遠慮なく挿入する。匡樹は全身を使ってその衝撃と快感を受け止めた。若い汗の香りが、段々と俺等のものと同質に変わって行くのを感じる。 「おっ、匡樹、淫乱な身体してやがんな!!締まりも、キツくてっ、最高だぜぇッ!!」 そう言いながら俺は何の前触れも無く射精した。腸壁に何度も浴びせかけられる熱い汁は、どんどん匡樹の身体に吸収されていき、余ったものは胎内の卵殻と結合して新たな『パレス』の孵化を促していく。うぞぞっ、と彼の腹が一度大きく揺れた。 「へへっ、いま生まれちまった……親父のガキ、俺ん中で……また俺、親父のガキに生まれちまった……」 『パレス』として変革過程の彼は、脈絡の無い言葉を繰り返し呟いた。顔は恍惚とし、ケツからはたっぷりと緑色の粘液が溢れ出している。浅黒い肌には、淫らな剛毛が生え揃い始めていた。仰け反って、半開きになった口からは、俺と同じ長く筒状に改造された舌がずるりと飛び出す。俺も誘われる様に舌を絡ませ、粘液をアンダーギアに滴らせていった。 「匡樹…………すぐにお前にも、新しいカラダを与えてやるからな」 「親父、俺すぐ欲しいっ!!早く親父みてぇな『成虫』に成りてえよぉっ!!」 「まだだ……まだお前は身体的に成熟していねえ」 「親父、俺、狂っちまうっ!!くれよ、早く、俺にくれえっ!!」 未だ「外殻」としての接続を持たない彼は、完全な「成虫」としての進化を憧憬していた。脳に直接植え付けられた、これから彼に訪れるべき記憶が彼を悶えさせる。『ライダー』としての種を確立する一員として、完全にバイクが「外殻」として神経接続されていくその子細な様子が。その殆どは俺の記憶・体感の伝達だった。 びきっ、と一際大きな音がして、匡樹の肉体は完全に俺等の同族と同化していた。繁殖を成功させた褒美が、俺の神経系に少しずつ与えられていく。そう、これだ。これを俺は求めていたんだ。 「あっはああああッ!!俺、すげえっこれがあああっ!!イイッ!!ギモチイイッ!!」 快感に逆らえず、俺は息子の前でよがった。小便の様に種子がどぼどぼと放たれ、全身に熱が回る。そんな俺の様子を見て、匡樹の最後のタガが外れて行く。 「お、俺も、出るッ!!化け物の種汁、俺のチンポから出るうッ!!」 まだ若い肉体から生み出された『パレス』の種子は、真緑ではなくまだ濃度が低く、薄みがかっていた。それでも精力は旺盛で、だくだくと、溢れては止まる事が無い。涎を垂らしながら、泥だらけのユニフォームを淫液で汚していく彼は、既に高校球児としての彼では無かった。 噎せ返る様な部屋に籠もった雄の匂い。繁殖の喜び。俺は『パレス』に感謝を抱きながら、もう一度息子を抱いた。   ※   神谷が『ライダー』の族長として生まれ変わったその背後で、もう1人の男が『パレス』として肉体を掌握されつつあった。 里見隼、24歳。アメフトのプロチーム選手で、ディフェンスラインを担当する重量級だった。練習帰り、チームのユニフォームのままその痴態を晒している。しかし、そんな予備情報は『パレス』達は考慮していない。最も自分の『族』として適合している体格の雄を強欲に確保しただけにすぎない。 「ふーっ、ふーっ、ふーっ……」 全身から湧き上がる汗の匂い、それに触手達は反応して彼を凌辱していた。中空に固定された里見は、ガチムチの立派な体躯を愛撫され、媚薬として働く粘液を全身に、そして体内に塗り込められていく。プロテクターの中にも、ケツワレの中にも、極細の触手がどんどん侵入し、その度に厳つい顔を歪めて切なく喘いでしまう。モミアゲから顎先にまで連なる髭は、たっぷりと湿り気を帯び、ヘルメットの中に雫を垂らしていた。 「何なんだよぉ、これ……ひぐっ!!」 恥辱に涙を流しながらも、身体は最早、従順に調教されてしまっている。愛撫するかの様にケツに擦り付けられた触手を、緩んだアナルが迎え入れる。腸内にせり上がる異物感に、里見は悲鳴を上げた。触手はエネマグラの様に前立腺を内部から刺激し、限界寸前だったチンポから熱い精子がどんどんと放出されていく。 「ひ、あっ、あっ、あああああっ」 ケツワレとフッパンに熱い液体が満ち、栗の花の匂いが辺りに立ち込める。触手はそれを満足げに摂取しながら、腸内で一気に種子をぶちまけて行く。里見の口はだらしなく開き、卵殻を欲している様にさえ見えたが、触手は下げられたアイシールドによって口内にいつもの様に侵入が出来ない。仕方が無いので、腸内にそのまま卵殻を植え付ける事にし、奇妙に膨らんだ瘤付きの触手を挿し込んだ。 『ククク、オ前モ我等ノ眷属ニナルノダ。ソレモ族長トナル、最モ尊イ『パレス』ニナ……』 「あっがああああああっ!!」 胎内に入る卵殻は、予め植え付けられた種子と反応し、急速に孵化していく。里見は吐き気を堪えながら、その様子をまざまざと見せつけられていた。自分が人外へと変わって行くその瞬間を。 「ああああああああぁあぁああっ!!」 身体に張り巡らされた神経の一本一本が、『パレス』と融合を果たしていく。鍛え上げられた体格は殆ど手を加えられず、その代わりに体毛や発汗等の基礎代謝を更に上げられた。それは間違いなく、里見の精神を壊し、そして快楽と喜びを刷り込む。自らの匂いに発情している自分に気付く。繁殖する事、それが自分に与えられた使命。天に突き上げられたイチモツは、とうとうフッパンを押し上げてグロテスクに触手の一部と化したその姿を月明かりに露わにした。愛おしげにグローブのままそれを擦ると、瞬く間も無く痙攣して射精した。真緑の種子が、つい数十秒前に吐き出されたものと同じ物質が、自分のチンポから放出されている事に、彼は喜悦以外の感情を持たなかった。 「体型型2類、良好」 そう呟いた彼は、既に触手を意のままに操る事が出来た。プロテクターの隙間やソックス、ヘルメットにそれらを格納すると、仁王立ちになり自らの融合を進めて行く。 「く……はっ、ああっ!!」 アメフトのユニフォームと融合した里見は、鎧の様なその外殻の隙間から粘液に塗れた触手を自在に出し入れする。『外殻』となったそれは、『ライダー』達の物よりも一般的で人間社会に適応する事が容易そうだと彼はほくそ笑む。野性味を帯びたその眼は、淫獣と化した彼の精神を如実に反映させていた。 「幸先の良い肉体を得たな、『ガード』」 里見の身体を動かして、声のした方向を向く。『ガード』それが彼の宿主となった『パレス』の族名だった。 「ああ、まだちょっと慣れないがな」 快感の裁量が難しく、一歩歩いただけで射精をしてしまう。足先と指先に神経が集中しているので、そこの感度はまだ調整が必要そうだった。 「お前はどうなんだ、『フェンサー』?」 「こっちもまだ駄目だ。でも、この宿主の記憶や経験は興味深い」 「出遅れるぞ。この星の雄は限られている」 「ゆっくりやるさ」 里見は首を振って歩き始める。記憶を弄り、懇意にしている男達のリストを確認すると、同じプロチームの男達が『ガード』としての適応がありそうだった。 (確かに、俺は幸先が良いぞ) 汗みずくの身体を愛撫し、宿主に快楽を与えながら『ガード』は闇夜に駆け出した。